経済産業省「未来の教室」海外実証事業から-Institution for a Global Society (IGS) 株式会社の取組-

このたび、経済産業省の『未来の教室』実証事業参加企業の取組をEDU-Portニッポンのホームページで紹介させていただくこととなりました。今回はInstitution for a Global Society 様にご寄稿いただきました。
同社が教育機関向けに提供している非認知能力の評価ツール『Ai GROW』の特徴や、教育現場への導入効果が詳しく解説されていますのでぜひご覧ください。
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皆さんは、自分の強みをどうやって把握していますか?

弊社は、社会で活躍するうえで重要な「非認知能力」を中心とした力を「360度評価」を通じて可視化できるツール等を子どもから社会人までを対象に提供しているEdTech/HRTech企業です。

日本の学校では、多くの場面で共同学習を活発に取り入れています。生徒たちは相互に関わり合いを持ちながら学びを進めていきます。弊社が教育機関向けに提供している評価ツール「Ai GROW」では、非認知能力をはじめとする能力について、自己評価に加えて生徒同士で相互評価を行うことで、より客観的な評価を実現しています。相互に関わり合う中で見せる姿を友だちに評価してもらうことで、自分では気付いていなかった強みも把握することができるのです。

しかし、相互評価をとりいれるうえでは、評価の甘辛など、さまざまなバイアスによる影響が避けられません。発達段階にある未成年ではなおさらです。そこで、「Ai GROW」では評価のバイアスやブレをAIを活用して分析し、補正しています。これにより、可能な限りバイアスを排除し、最大限に客観性を高めた評価を実現しています。

生徒たちには、個人レポートが提供されます。これは主に強みに着目した、ポジティブなフィードバックであり、生徒の自己肯定感向上に貢献します。さらに、自分と友だちの評価の差異を知ることで、メタ認知力も向上します。


▲ポジティブなフィードバックのための「Ai GROW」個人レポート

また、先生方は学期ごとに、生徒の定量的な評価に加え、定性的評価を行います。これまで先生方は努力と経験でこれらを補ってこられましたが、働き方改革が叫ばれ、その他の業務も多岐にわたる中、大勢の生徒を相手に一人ひとりに時間をかけて能力や成長を見取ることは現実的ではありません。先生方の手間をなるべく最小限にしつつ、大人数に対しても日々の学校生活の中でより多くの目を通した多角的な評価を行うことができる「Ai GROW」は、いまや円滑な学校運営には不可欠なツールといえます。

▲「Ai GROW」の管理画面に表示される各生徒のデータ

▲特に高い資質・能力に応じた所見を提案する「所見提案機能」

このような評価により課題が明らかになれば、目標を立てることができます。弊社では、評価ツールに加え、伸ばしたい力やクラスの状況に応じて、授業1コマから課題を解決するための思考の枠(フレームワーク)を学ぶことができる動画コンテンツ「GROW Academy」や、それらの思考の枠やデータ分析などを学びながらグリーン社会の実現など答えのない課題解決に起業家として挑む起業家シミュレーションプログラムもご提供しています。思考の枠はさまざまな課題に取り組むうえで、是非身に付けておきたい考え方です。見て学ぶだけではなく付属の指導案やワークシートを活用してみることで、思考の枠は社会で活用できる「本当に生きた力」になります。

世界では、日本の教育が育む協調性や感性が評価されつつあります。体育のグループ学習などの組織的な活動や音楽教育など、日本の特徴的な教育がもたらす効果が注目されています。しかし、そのような活動で育まれる協調性や感性、創造性などは、これまではなかなか可視化しにくいものでした。「Ai GROW」のような評価ツールを組み込むことで、一人ひとり違う生徒たちのそれぞれの強みに目を向けながら、どのようなアクティビティがどのような力を伸ばすのか、エビデンスベースでその教育効果を明らかにすることができるようになります。

実際、最近は弊社の「Ai GROW」のより客観的な評価の仕組みやそれがもたらす教育効果の可視化にご注目いただき、海外展開での活用に向けたお声がけをいただくことも増えてきました。特に大人数を相手に授業を行うことも多い海外で一人ひとりの強みやその変化を可視化できること、そしてプログラムを実施するだけではなくその成果をエビデンスベースで検証でき、次へつなげられることは大きな強みです。近年は、このような海外展開プログラムにおけるツールの導入だけではなく、ツールを活用した共同研究の計画も進んでいます。先日は、アジア開発銀行の「第10回ADB国際スキルフォーラム:デジタル化と気候適応型の人間と社会の発展の新時代」に招待いただきました。トークセッションやプレゼンテーション、「Ai GROW」採用校の先生による授業デモンストレーションなどの機会をいただき、多くの方に関心を寄せていただきました。


▲アジア開発銀行 国際スキルフォーラム(2023年)のトークセッションにも招待

▲アジア開発銀行 国際スキルフォーラム(2023年)でのプレゼンテーション

▲アジア開発銀行 国際スキルフォーラム(2023年)での「Ai GROW」採用校の先生による授業デモンストレーション

さらに、弊社の評価システムはハーバードビジネススクールにおけるケースにも採用されています。AIをブラックボックスとしてではなく、評価のバイアスを排除し、より良い評価を実現するための手段として活用している点が多くの注目を集めていると考えています。

▲ハーバードビジネススクールでの講義の様子

私たちは、日本の教育がもつ力は、もっと多くの国へと広がる可能性を秘めていると考えています。その教育効果を明確にし、海外の多くの国で課題の一つとなっている大人数クラスにおける個別対応を可能にする「Ai GROW」は、日本の教育をより多くの国へと届けるためのサポートツールとなりえます。日本の教育が、そして私たちのツールが、世界で一人でも多くの子どもたちの成長と幸せを支える一助となれたら。私たちの挑戦はまだ始まったばかりです。

寄稿者プロフィール

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