経済産業省「未来の教室」海外実証事業から-株式会社Libryの取組-「デジタル教材プラットフォームLibryによる学習の効率化支援」

2021年4月2日

経済産業省「未来の教室」実証事業及び海外実証事業とは?

世界が「課題解決・変革型人材(チェンジメーカー)」の輩出に向けた能力開発競争の時代を迎え、各国で革新的な能力開発技法(EdTech)を活用した「学びの革命」が進んでいます。経済産業省では、学び手自身が自らの学びを設計していく未来の学び(「未来の教室」)を実現するため、学びの個別最適化・文理融合(STEAM)・社会課題解決を主なテーマに、EdTechを活用し、効率的な知識習得と創造的な課題発見・解決能力育成を両立した新たな学習プログラムの開発・実証を進めています。

「未来の教室」実証事業

https://www.learning-innovation.go.jp/

令和2年度は、経済産業省からJETRO(日本貿易振興機構)に委託し、日本のEdTech企業の効果的な海外展開モデルの確立や課題抽出を目的として、「未来の教室」海外実証事業を実施しました。今回は、同事業の令和2年度採択事業者である株式会社Libry(リブリー)より、フィリピンにおける取り組みと成果、デジタル教材活用にて海外展開を目指す際のTipsを共有いただきました。

*******

「Libry(リブリー)」は、既存の教科書や問題集をデジタル化し、「問題検索」や「問題レコメンド」など、学習要素と学習履歴に基づいてより効率的・効果的に学習できる機能を付したデジタル教材プラットフォームです。教員向けには、生徒たちの学習履歴の確認や、宿題の配信・回収・集計を行える管理ツールを用意しており、教員の働き方改革に貢献しています。

当社の原点には、生まれ育った場所による教育格差への課題意識があり、コーポレートビジョンに「一人ひとりが自分の可能性を最大限発揮できる社会をつくる」を掲げています。現在は国内のみでサービスを提供していますが、将来は海外にも展開できればと考えています。

今回の実証事業では、長年にわたり教科書会社として日本の教育を支える株式会社新興出版社啓林館と、途上国の教育支援に深く携わっている特例認定NPO法人e-Educationの協力のもと、フィリピンを対象として活動を実施しました(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000054682.html)。
フィリピンの教育は下記の課題を抱えています。

① 学校における紙面学習教材の不足
特に公立高校では、紙の教科書が1人1冊配布されていない学校が多数あります。

② 教員の業務過多
生徒数の多さから、複数学年及び二部制を担当する教員が多く、教員一人あたりの業務が非常に多くなっています。

③ 理数科教育を中心とした生徒の低学力
PISA2018(OECD生徒の学習到達度調査2018年調査)の「数学的リテラシー」の分野において、全78か国・地域中77位注1となっています。

今回の実証事業では、啓林館制作のフィリピンのカリキュラムに沿った教材をリブリーで提供することで、生徒の自宅学習の質と効率を向上させ、上記の課題解決を目指しました。

新型コロナウイルス感染症の影響で、フィリピン全土で21歳未満の人々の外出が制限され、児童生徒が学校に通えなくなってしまったため、当初の活動計画は変更を余儀なくされましたが、10月中旬から1か月間、パイロット校である中学校の生徒に自宅学習でリブリーを使ってもらいました。実証期間の最後には、数学のテストを実施しました。

テストの結果を見てみると、リブリーを使って勉強した生徒とリブリーを使わないで勉強した生徒の間で得点に2.5倍の開きがありました。また、リブリーを使った生徒にアンケートを実施したところ、約75%の生徒から「紙の教材の代わりにリブリーのみで学習を進めることができる」との回答を得ることができました。現在、リブリーは日本の生徒たちに受け入れられていますが、日本の生徒たちだけでなく、海外の生徒たちも「リブリーのUI注2が使いやすい」と感じてくれていることが分かり、自信につながりました。

一方、今回の実証事業ではデジタル教材活用における課題も2つ把握しました。1つ目は、「家庭の通信環境」です。生徒を対象にしたアンケートでは、90%が家庭にWi-Fi環境がなく、モバイル回線を利用していると回答していました。この結果から、容量の大きい動画や画像の多い教材よりも、テキスト中心や、部分的に端末にダウンロードできる教材などが受け入れられやすいと推察されます。日本においても、家庭の通信環境は様々なので、今後のサービス開発でも意識しなくてはならないポイントであると再認識しました。

2つ目は「教員のITリテラシー不足」です。今回の実証事業では、リブリーを使って教員から生徒に宿題をデジタル配信してもらう計画でしたが、ITリテラシー及び心理的なハードルがあり、スタッフがほぼ代行しました。現在、日本ではリブリーを学校でスムーズに使い始められるように、使い方を紹介したパンフレットや動画を用意し、要望があれば教員研修を実施しております。今後、海外に展開する際には、このようなツールや教員研修の現地化は必須であると感じました。

注1:「OECD 生徒の学習到達度調査2018年調査(PISA2018)のポイント」(文部科学省・国立教育政策研究所)より
注2:UI=ユーザーインターフェイス。システムやサービスとユーザーの接点のことで、情報をやりとりするための表示画面や操作方法等の総称。

このページの先頭へ戻る