カンボジアにおける学校保健の普及を目指して(2018年度EDU-Port応援プロジェクト:国立大学法人香川大学)

2019年10月24日

プロジェクトの背景や今までの活動紹介

カンボジアは、1991年に国連の仲介で和平が実現するまでの約20年間、ポル・ポト率いるクメール・ルージュによる大量殺戮・知的資産の破壊、ベトナム戦争の影響による難民の発生と貧困が国を覆う状態でした。和平合意後もポル・ポト政権時代に殺害された医師、教師、弁護士、看護師等の専門職の人数は少なく、収容所として使われた小学校の教室には未だ電灯がなく、教育・保健分野の立ち遅れの回復に現在も努めています。
国立大学法人香川大学は、2017年3 月~ 2020年2月まで、国際協力機構(JICA)「草の根技術協力事業」地域特別支援枠の採択を受け、「カンダール州カンダルスタン郡の衛生教育改善のための学校保健室体制の構築プロジェクト」を香川県、現地NGOと共にカンボジア教育青年スポーツ省と連携し、実施しています。
同プロジェクトでは、本学非常勤職員の長期派遣、政府・教育関係者の来日研修の実施、研修後セミナーの実施を通して啓蒙活動を行っています。また、教育青年スポーツ省の副読本認定を受けた「学校保健テキスト」をカンボジアで初めて刊行し、トイレと手洗い場モデルを現地に建設し、衛生教育のインフラ整備を政府に呼びかけています。政府は香川大学の保健室体制モデルを基に2020 年から全国の小中学校に保健担当者を配置する施策も策定しました。また、現地の2 小学校にトイレ・手洗い場を建設しました。

カンボジア発の教育青年スポーツ省・保健省認定「保健テキスト」小学校1年~6年用

Kandal州Kandal Steung群TranpainVeng Primary Schoolにクラウドファンディング資金のトイレを建設

このような背景の中で、2018年度には、科学技術人材育成費補助事業「ダイバーシティ共同研究制度」の支援を受け、カンボジア教育青年スポーツ省学校保健局副局長 Dr. So Chhavyroth、カンボジア保健省予防医学局副局長 Dr. Hak Sithanを招請し、学校保健研修を実施しました。また、教育青年スポーツ省と保健省の両省の協力を促進するため、日本型保健教員のカンボジア型改編に向けた現地ニーズ調査の実施やカンボジア保健教員養成のための保健省・教育省の連携体制構築支援を行いました。これらの取組は、2018年度EDU-Portニッポン応援プロジェクトとしても支援を受け、実施されました。

上田医学部長を訪問

教育学部附属小学校でクラス給食を視察

教育学部附属小学校保健室を視察

教育学部附属小学校縦割り給食を視察

スキルスラボラトリーでの衛生教育演習

公衆衛生学の講義

高松市保健センターでの保健政策視察

本学正門で副学長と共に

今年度の活動の具体例と成果

2019年度は、JICA草の根技術協力事業の「保健室体制作り」を強化することを目的として学校健康診断研修を実施し、今後のカンボジアの学校保健政策への提案を検討してまいります。
2019年10月には、香川大学とカンボジア健康科学大学(UHS)とで締結された学術交流協定の元で、UHSのほか、プノンペン市内の小学校とカンダール州カンダルスタン郡の小学校一校を会場に、学校歯科検診や学校内科検診を政府関係者、大学関係者、現地小学校教師らとともに実施します。

日本人が気付かない日本の教育の良さや、逆にカンボジアから学んだこと

本学が、カンボジアにおける衛生教育の技術移転に注力する理由は、日本において養護教諭を養成する教育課程が、他国には見られない教育学部および医学部(看護学部)の2分野の連携による専門職であるという点にあります。更に、教師でありながら、子どもを評価せず、あくまで子どもの立場にたって、学校の安全、衛生、保健の側面から、子どもの発育・発達を支援するという素晴らしい職種を養成する意義を知ったからです。これは、特に貧困国において弱い立場にある子どもの健康を守るために、共有することができる日本の大学の知見であると思います。
カンボジアでは、多くの知的階層が殺戮された影響もあり、39歳という若さで副大臣などの高官に就いている女性がたくさんおられ、少なくとも学校保健関係は、政府高官の多くが女性です。この状況から、カンボジアの女性の方々から、日本はSDGsの目標5「ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」において遅れているという意見を頂きました。日本の課題を考えさせられました。

今後の抱負

今日、課題となっているのは、開発途上国や紛争経験国における国内の経済格差の問題だと感じています。カンボジアであれば、プノンペンの中心部では人々は立派なマンションに住み、衣食も満たされつつあります。しかし、公共交通機関がまだ不十分な郊外や地方では、衣食や経済の格差があります。特にドルで経済を営む人々と、現地通貨リエルで経済を営む人々との格差は大きなものです。
我々のプロジェクトで、プノンペン市内の私立小学校と市内から車で40 分のカンダルスタン郡の小学校の児童の身長と体重を測定し比較したところ、男女ともに6学年の殆どで、プノンペン市内の児童の発達の方が良いという有意な差がみられました。国内の児童の体型の格差は、この国の大きな課題であり、政府の学校保健政策の進展を期待したいところです。今後は、特に学校保健人材の養成に関わる教育人材の育成を支援していきたいと考えます。

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