「学校を核とした地域創生」に向けたブータン王国での学校魅力化プロジェクト(2018年度公認プロジェクト:一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム)

活動の背景

課題(解決)先進地である離島・海士町ではじまった島根県立隠岐島前高校の魅力化プロジェクトは、地域唯一の高校の廃校という学校と地域の’危機’からはじまりました。学校と地域の存続の危機にあたって、目の前の「存続」を目標とするのではなく、「魅力化」という旗を掲げました。結果として、全国からも生徒が集まる学校となり、危機を乗り越えられたのは、存続を目標にしていたら生まれなかった発想や視点があったからこそだと思います。
こうした「学校を核とした地域創生(学校魅力化プロジェクト)」の動きは、現在、島根県をはじめ全国に広がっています。今回のプロジェクトのパートナーであるブータンも、国としては伝統文化の維持活用や地域活性化を政策の柱に据えているものの、地方から都市部への若年層の流出は著しく、重大な課題となっています。

プロジェクトの目的

そこで、学校と地域の協働による「地域の次代を担う人づくり」を、地域課題解決型学習や地域系部活動、21世紀型寺子屋等の展開を通して推進することを目的とし、本プロジェクトを立ち上げました。同時に都市部から地方への新たな人の流れを創出することで、持続可能な地域づくりにも寄与することを目指します。

活動内容と成果

地域課題解決型学習(以下、Project Based Learning:PBL)の現地での実施を中心に、活動を進めました。
1年目(2018年度)は、候補地調査やプロジェクト立ち上げに向けた協議のために、複数回現地に渡航し教育省・公共事業省・GNH(Gross National Happiness)委員会等との協議を進めるとともに、PBLプログラムのモデル開発のため、現地の教職員や生徒とのワークショップを行いました。またブータンと隠岐島前高校の生徒の交換留学や協働の探究学習を進めました。
2年目(2019年度)は、チュカ県にある3校の生徒19名と隠岐島前高校の生徒4名を対象に、3泊4日の合宿型PBLを実施しました。「日本人観光客がチュカ県に来たくなるようなプロモーション動画を作る」というミッションのもと、実際に地域に出て、魅力を探すフィールドワークを行いながら企画を練り、動画を完成させ、現地の旅行会社の方に発表しました。課題解決を目指すだけではなく、地域にある魅力を見出し、価値をつくるという流れにしたことで、生徒の意欲、主体性が高く、地域に対する肯定感も高まりました。

kyoiku-miryokuka-platform-2018project4.jpgフィールドワークでのインタビューkyoiku-miryokuka-platform-2018project3.jpg混合チームでのディスカッション
kyoiku-miryokuka-platform-2018project1.jpg中間発表とフィードバックkyoiku-miryokuka-platform-2018project2.jpgプロジェクトの最終発表

当日のプログラムの様子は、下記に動画を公開していますのでご覧ください。

活動の様子(英語):

 https://www.youtube.com/watch?v=A_87_5arfGI

事前に教員向けファシリテーション研修を行い、その教員たちが実際に生徒のチームに伴走し、振り返りも行いました。通常の授業は自身が教えることが中心であるため、生徒自身が考える機会を見守るという関わりに戸惑う様子も見られましたが、4日間での生徒の成長を見て、生徒の力を信じて任せていく学びのあり方の有効性を感じられたようです。

kyoiku-miryokuka-platform-2018project5.jpg教員向けファシリテーション研修kyoiku-miryokuka-platform-2018project6.jpgプログラム参加者集合写真

さらに、ブータンからの研修員(行政職員、教員、地域コーディネーター等)の受入(20名程度)を海士町で実施し、隠岐島前高校等のPBLを見学する機会も設けました。
学校魅力化プロジェクトは、過疎化・地域衰退・財政難などの圧倒的に不利な状況を逆手に取って、むしろそれらを教育資源として積極的に利活用することで独自性を築いてきました。ブータン王国も共通する課題を抱える「課題先進地域」であり、その親和性は高いと感じています。

今後の展開

今年度以降も、合宿型PBLを発展させ、GNHの実現に向けた継続的な課題解決型学習「PBL for GNH」を協働で開発していく方向で基本合意を得ています。現地のコーディネーター及び教職員の研修・育成や、実施に必要なツールの開発も進めることで、ブータンでも持続可能な取り組みが可能になることを目指します。
一方で、日本がブータンのGNH教育(Educating for GNH)から学ぶことも多いと感じています。本事業での成果をもとに、PBL for GNHの開発を日本にも逆輸入可能なものとして進めていきたいと考えています。

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