インド企業と現地日系企業が理想とする人財の創出と、それを達成するための教育コンテンツ開発(2018年度EDU-Port公認プロジェクト(コンソーシアム枠):代表機関 学校法人大原学園)

株式会社学研ホールディングス/国立大学法人奈良女子大学/株式会社勝英自動車学校
日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社/学校法人大原学園

活動目的

インド企業及び現地日系企業の人財ニーズを充足する人財育成コンテンツを開発し、育成した人財が現地日系企業等に就職するスキームをPhygitalモデル*1で構築することで、インドにおける労働力不足解消を実現し、日印両国の信頼関係をより強固なものへと昇華させることを目的とする。
また、企業が必要とする人材が高度化し、かつ育成にかかる期間が長期化していることを鑑み、日印教育機関の相互交流を通し、Society5.0*2の新時代を担う人財育成のための教育の在り方について、提言を行うことを目的とする。

*1 Physical(教室)とDigital(デジタル)を組み合わせた教育モデル
*2 サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)。狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。(内閣府HPより抜粋)

活動概要とその成果

① 日本語教育の実施・インド人日本語講師育成・日本情報センター設置事業

学校法人大原学園は、バンガロールに位置し総合大型大学であるReva大学に「まずは日本という国を知ってもらう目的で日本情報センターを共同で設立した。現地カウンターパートEWISとReva大学と学校法人大原学園の共同であるが、ここに至るまでは、コンソーシアムならではの各社のネットワークを駆使しての道のりであった。闇雲に日本語教育を振り回しても受講してはもらえない。日本がどの様な国なのか、そこに何があるのかを伝える事が重要であった。
この様な基盤の上に日印教育機関の相互交流を通し、Society5.0の新時代を担う人財育成に必要不可欠な日本語話者の育成に取り組んでいる。その中で、日本語教育教材「まるごと」を用いた「Phygital」モデル型の日本語教育が、従来の教育方法よりも適していることなどが、実践を通じて徐々に明らかになっていった。

レバ大学日本情報センター開所式日本情報センター開所の模様

② 工学系教育発展のためのプログラム開発・提言の取りまとめ事業

日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社と奈良女子大学付属教育学校は、STEM教育プログラムをインドの国立中等教育学校Kendriya – IITBonbay, Pawaiおよび私立の中等教育学校Singania Schoolで試験的に実施し、生徒の学習効果の測定とインドでの展開の可能性を調査した。今後のSTEM教育プログラム開発のためのワーキングスペース「TCS iON(教育クラウドサービス)」を使った教員ハブも構築した。今後は、運用と活用について検討を進める。
また、両校に対し「日印教職員交流および学生交流、カリキュラム開発、未来型教育の提言」の事業において、インドの中等教育を担う教員へのアンケートを行った。アンケート結果から、「忍耐力や協調性といった非認知能力」、すなわち、自発的で、ともに助け合い、共通の利益を求める態度を涵養する教育プログラムの必要性をインドの中等教育を担う教員自身が強く感じていることがわかった。

TCS iONで実施した学習評価STEM教育授業(ドローン)

③ 日本型交通安全教育による人財育成・輩出スキームの構築事業

株式会社勝英自動車学校は、インド物流総合サービス会社SITICSに安全運行システムを導入して検証を行った。この安全運行システムの導入は、その企業にとって「忍耐力や協調性といった非認知能力の育成」と定義している。株式会社勝英自動車学校が、インドの安全運転の意識やニーズを測るため、運行乗務員対象にアンケートを実施したところ、譲り合いの精神、相手を思いやる気持ちなどの非認知能力を育むことが、安全運転マインドの育成や生活者が日常的に移動手段として使用する社会インフラの安全性を高めることに寄与できるとわかった。

STICS社経営陣とのMTG 

④ 日本語・モラル教室の試験的導入および検証・人財輩出スキームの構築事業

株式会社学研ホールディングスは、日系IT企業人材採用担当者をインドにお連れし、ムンバイでインド・タタ・コンサルタンシー・サービシズ(TCS)との会議、プネ語学学校では日本就職希望のインドIT人材向けにミニJOBフェア(合同企業説明会)と個別面接を実施した。その場において、日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ株式会社がIT専門スキルの評価と認証を行う「iON Procert」と、企業と求職者のマッチングサイト「TCS iON Talent Acquisition center」を構築し、日系企業向けに「iON Procert」を使った人材マッチングの活用方法の説明を行った。
本コンソーシアムが定義した日本型教育の「忍耐力や協調性といった非認知能力の育成」という特徴を持つ人財を日系企業側が「求めている」こと、就業を希望するインド人候補者側は、「求められていること」を理解することで、お互いの文化を尊重しつつ相互理解を深められるインターンシップ(短期的な採用)が人財輩出スキームとして構築できるとわかった。

語学学校SIFILで行われたミニJobフェアの様子日本企業とインド人求職者との面談の様子

以上から、下記の通り提言する。

提言

本コンソーシアムのように多様な事業体が相互に関わり合い補い合いながら事業を進めていく事業形態が、Society5.0の新時代を担う人財育成のための教育の構築に有効である。
本コンソーシアムの上記①~③の成果は、本コンソーシアムが定義した日本型教育の、「忍耐力や協調性といった非認知能力の育成」に寄与するものである。①日本型教育の理解と導入および展開を行う人財育成、②インドの中等教育での日本型教育の導入と展開、③教育を支える社会インフラ整備につながる安全教育の実現といった活動を通して、インドでの持続発展可能な日本型教育の導入を目指している。
将来的には、上記④の成果にある、インド企業及び現地日系企業の人財ニーズを充足する人財育成コンテンツがより良く機能することにも寄与すると考える。
本コンソーシアムの事業のように、現地のニーズの発掘、日本と現地の互恵的関係の構築、現地での日本型教育の導入と展開の実現のための環境整備が一体となっている事業が、Society5.0の新時代を担う人財育成に有効である。

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