日本型の音楽教育をエジプト公立校40校に導入拡大 (令和4年度応援プロジェクト:ヤマハ株式会社)

■プロジェクト概要

ヤマハ株式会社は、世界中の子どもたちが音楽・楽器に触れる機会を獲得できるよう、「公教育における音楽・器楽教育の普及」を目指した「スクールプロジェクト」を展開しています。令和2年度に続き、令和4年度に2度目のEDU-Portニッポン応援プロジェクトに採択されたエジプトでは、前回と同じくエジプト・日本学校(EJS)の小学3年生と4年生を対象に、音楽・器楽の活動の導入と実施校の拡大を目指します。

■事業の進捗 

◇新しい教材を開発

小学4年生には音楽の国定カリキュラムがあるため、補足として弊社開発教材を使ったリコーダー演奏活動を中心に行っていますが、3年生の国定カリキュラムには音楽の授業がありません。そのため、4年生からの音楽科に向けての導入という位置付けで、3年生のために、新たに日本の音楽の教科書に近い教材を東京学芸大こども未来研究所様と開発しました。

エジプトの小学校では、1)歌唱と楽典のみで授業が行われ、2)教員からの一方通行の授業が一般的です。今回新たに制作した教材は、1)日本と同じ4分野(歌唱・器楽・音楽作り・鑑賞)を取り入れ、2)ペアワークやグループワークなど、児童の対話を重視したものとなり、日本型教育に近い音楽教育を取り入れることで、より音楽の知識・技能の向上や非認知能力を育み、4年生からの音楽科の学びへつなげることを目指しています。

◇新しい教材をつかった教員研修

新教材を導入するにあたり、2022年7月と2023年2月にそれぞれ現地にて対面で教員研修を行いました。非認知能力を育む教育では、児童の思考や対話を促すファシリテーションや声掛けなど、演奏以外のスキルも必要不可欠です。40名を超える教員たちが参加した研修では、リコーダーの演奏技能向上とともに、ペアワークやグループワークを自ら体験しながら、ファシリテーションスキルなどの指導法について学んでいきました。

 

◇9校→40校へ導入拡大

エジプトでは、2021年11月より9校のパイロット校にて音楽・器楽教育を実施してまいりましたが、2年目は小学3年生が在籍するすべての学校へ拡大することが決定。実施に当たっては、エジプト教育・教育技術省が1,500本のリコーダーを購入するなど、今後の持続的な協業に向けて一歩前進することができました。そして2022年11月に、9校のパイロット校を含む合計40校で授業が開始されました。教室にあるものを使って音を奏でるアクティビティや、音楽を聴いて体の動きや絵で表すなど、新しい体験を教員も児童も楽しんでいるようです。反面、グループワークに慣れておらずグループを作るだけでも時間がかかってしまうなど、新たな課題も見えてきました。

写真提供:エジプト・日本学校

■今後の計画

◇発表会

1年目のパイロット活動の際も実施したように、上手な子どもだけが舞台に上がり演奏することが多かった従来のエジプト型ではなく、全員で学習の成果を発表する機会を持ち、それに向けて全ての児童が共に達成感やモチベーションを高め、みんなでひとつのイベントをつくりあげるという経験をすることを重視し今年も発表会の実施を計画しています。

全員での発表の実施、またそれに向けて児童が主体的に準備をするプロセスを大切にしながら、教員に対しても全員が「できた」と思える内容の設定や、みんなでひとつの発表会を作り上げようと努力することの大切さなどを伝え、一人一人が楽器を使って表現することの楽しさを感じながら1年の活動を締めくくりたいと思っています。

◇非認知能力の計測

1年目にも実施した質問紙調査および動画分析を、2年目は40校で実施する予定です。質問紙調査のプレ調査は11月の授業前に実施完了しました。現在は各教員に授業動画を録画してもらっているところです。1校に1人しか音楽科教員のいない学校が多く、日本のように授業研究が一般的ではないエジプトにおいて、授業動画の録画と共有は、各教員にとって自分の授業を客観的にフィードバックしてもらえる良い機会とみていただいています。質問紙調査のプレ調査についても、少しでも多くの回答数を得られるよう工夫してまいります。

現在取り組んでいる活動や調査は、長期間の継続が重要ですが、その中でも教材や教員研修についてはまだまだ改善の余地があります。授業動画の視聴や現地へのヒアリングを行いながら、より効果的な手法について引き続き検討してまいります。

今後もエジプトにおいて、エジプト政府教育指針EDUCATION2.0で目指す全人教育に貢献できるよう、日本型教育を用いた音楽・楽器の活動を継続し、子どもたちが音楽・楽器を楽しむことのできる環境を整えてまいります。

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