リコーダーを用いた日本型音楽教育をインド・デリーの公立初等学校10校で展開 (令和4年度応援プロジェクト:ヤマハ株式会社)

■プロジェクト概要
ヤマハ株式会社(以下、当社)は、世界中の子どもたちが音楽と楽器を使った活動を楽しむことができるよう、「公教育における音楽と楽器を使った活動の普及」を目指した「スクールプロジェクト」を展開しています。令和4年度 EDU-Portニッポン応援プロジェクトとして、エジプト・ブラジル・インドでの事業が採択されていますが、今回はインドでの取り組みをご紹介します。

■背景
インドには製販一体の現地法人があり、ポータブルキーボード、アコースティックギター、音響機器などを生産・販売しています。現地の音楽文化に寄り添いながら事業を展開し、平成29年から、私立初等学校の課外授業にてリコーダーやキーボードを用いた音楽普及活動を推進してきました。

そして令和5年から新たな取組として、デリーの教育委員会と連携し、公立初等学校10校をパイロット校とし、第5学年の正規授業を対象に、リコーダーを用いた音楽授業を展開しています。当該事業は令和4年度応援プロジェクトに採択され、在インド日本国大使館のバックアップのもと、展開開始に向けた準備を進めてきました。

デリー教育委員会への推薦レター手交の様子在インド日本国大使館とのミーティング

■事業の進捗
◇教員研修の実施

リコーダーを用いた音楽授業の導入に当たり、まずは現地法人が派遣するローカル講師が、教員への技能的な指導研修を実施しました。それに加え、令和5年10月には本社の日本人指導メンバーがデリーを訪問し、音楽教育を通じて児童の非認知能力を育むプロセスにフォーカスした対面研修を実施しました。

当社が音楽普及活動で取り組んでいるのは、単に楽器を上手に演奏出来るようになることを目指す教育ではありません。楽器を用いた活動を通じた人材育成を目的とする、全人的な教育の普及を目指しています。 演奏習得のプロセスに、ペアやグループワークによる他者との協働、感じたことの言語化と共有、児童自らが考え創り出す経験、児童同士で教え合う経験などを組み込み、児童の非認知能力を育むことを目指しています。

令和5年10月の研修では、教員中心の授業から児童中心の授業形態への転換を狙い、教員にファシリテーターとしての役割の重要性を伝えました。ペアで児童同士がリコーダーの指使いや音色を確認する手法や、ソラシ3音でのメロディーづくり、グループでの発表と互いに良い部分を見つけてフィードバックする活動などの具体例を教員に体感してもらい、教員による模擬授業を実施することで定着を図りました。


また、研修ではリコーダーの指導方法だけでなく、インドの童謡などに合わせて体を動かしたりすることで、リコーダー演奏に必要な拍感を身につける常時活動(音楽の導入活動)について紹介しました。授業の最初に音楽やビートに合わせて思わず友達や先生とコミュニケーションを取りたくなる仕掛けを導入し、楽しみながら児童同士が自然と触れ合い、音楽のクラスを安心できる空間にしていくことの大切さを伝えました。これらの活動は教員だけでなく、教育委員会の上層部の方々も一緒に体験し、笑い声や拍手が飛び交い、大いに盛り上がりました。

研修の数日後には早速授業に取り入れたという教員からの嬉しい連絡もあり、研修で学んだことを楽しく児童に届けている様子が伺えました。

◇授業の実施
研修実施後にはパイロット校2校の様子を見学しました。どちらの学校も令和5年4月から半年間、学習してきた曲の演奏で我々を歓迎してくれるなど、リコーダーを使った音楽教育が確かに児童まで届いていることを確認しました。

児童からは、リコーダーの好きな点について「友達と一緒に演奏できるのが楽しい」「伴奏音源に合わせて演奏するのが楽しい」といった声が挙がりました。

◇DIDAC India 2023に出展
令和5年10月17日から19日にかけて実施された、インド最大の教育分野のイベントであるDIDAC India 2023にブースを出展しました。2万人以上が来場した本イベントでは、多くの教育関係者に、当社の音楽教育に対するインドでの取組を紹介することができました。またジャパンパビリオンとして、EDU-Portニッポン事務局、株式会社タマイインベストメントエデュケーションズ様とも連携し、多くの来場者に日本型教育をアピールしました。

■今後の計画
応援プロジェクトの活動としては、今後もリコーダー授業を継続していくとともに、発表会の実施や日本の小学校とのビデオ交換を通じた交流を計画しています。

またDIDAC India 2023に来場した学校との連絡を通じて、当社プログラムの導入ならびにインドでのさらなる音楽教育の質の向上を目指して取り組んでまいります。

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