「エジプト日本学校」でスーパーバイザーとして勤務する川越先生にお話しを伺いました

エジプトは、教育改革を推進するため、2018年から「エジプト日本学校」(Egyptian Japanese School = EJS)を設置し、特別活動を中心とした日本式教育を導入しています。現在EJSの数は69校、来年には103校にまで拡大する予定です。
そのエジプトの教育改革を支えているのが「日本人スーパーバイザー」の存在です。現在16名が在籍し、来期からは新たに22名の配置が予定されています。日本の小学校等における管理職経験を持つ日本人スーパーバイザーは、特別活動の普及・充実、学校運営の改善等にエジプトの管理職、教職員と共に取り組んでいます。
今回、2020年からスーパーバイザーを務める川越豊彦先生に、現地での生活やEJSでの業務についてお話しを伺いました。

川越先生がスーパーバイザーに応募した背景をおしえてください。

-2019年の秋、知人からエジプトで日本式教育を普及させるために、日本人の管理職経験者を募集しているという話を聞きました。既に定年退職後も再任用校長として継続して勤務することを考えていた私には、関係ない話と聞き流していました。
しかし、ある日、スフインクスが手招きをしている夢を見て、これまでの経験が遥か西方の異国の地で役に立つのであれば、退職後のセカンドステージの舞台をエジプトにするのもいいかなと考え応募しました。

実際赴任してみて生活はどうですか。

-エジプトの物価は日本の1/3程度。家具・家電付きの住居を提供してもらっているので、月2,500ドルの月給で充分生活を賄えます。通勤は運転手付きの車での送迎があり、健康保険はエジプト側で加入してくれるので医療費は一定の補償があります。突然の断水や停電といったトラブルはありますが、概ね安心で快適な生活を送れています。

スーパーバイザーはどのような業務をするのですか。

-私自身はエジプト教育省内でEJSを統括しているProject Management Unit(PMU)に勤務しており、EJS全体の管理職研修の企画や、教育の質の向上のため新たに学校評価を導入するとともに、管理職の業績評価システムの改訂などを行っています。各EJSに配属されているスーパーバイザーは、主に授業観察とそのフィードバック、校内の教員研修の企画と資料作成、校長・副校長からの相談事項への助言などを行っています。勤務時間は、7時50分から15時50分(休憩を挟み実働7時間)。
-業務の補助として、スーパーバイザー間で、作成した資料の共有や定期的情報交換を行うようにしています。
-日本語⇔アラビア語の通訳のサポートもあるので、ことばの問題は少ないと思います。

-スーパーバイザーとJICA専門家、JICA海外協力隊との役割分担について。 JICAの専門家は制度のモニタリングを行っていて、EJSの運営上の課題改善に第三者の視点から関わっています。JICA海外協力隊は学校の中で教員として教育活動を行い、日本式教育も手助けしています。スーパーバイザーは指導・助言をとおして、日本式教育の中身の充実と普及がメインの役割です。JICAとは役割が異なりますが、目的は「日本式教育の定着と充実」である点は共通しています。
-スーパーバイザーに対する学校や保護者からの評判は良いと思います。学校に日本人スーパーバイザーがいることで信頼されやすいという側面もあります。

6年間スーパーバイザーをやられて、エジプトの学校の印象をおしえてください。

-日本式の学校運営の誇るべき点は、自ら課題を発見し、課題解決に向けて取り組む自律的な学校運営にあると考えていますが、エジプトではそのような学校運営は十分に行われていないと感じています。PMUから日本式の学校運営を定着させてほしいと言われたとき、私はこの自律的な学校運営を定着させようと考えました。皆で課題に対して知恵を出し合い、昨日よりも今日、今日よりも明日にむけて改善し、子供たちにより良い教育を与えられる体制にしたいと考えて取り組んでいます。
-他方で、学校にもよりますが、エジプト人の若い先生方の学ぶ意欲がとても高いことに驚かされました。特に、南部のアスワンではまじめな先生が多く、授業観察の後にフィードバックをしたら、次回の授業でその内容を反映し、先生によってはそれ以上のことを行っていました。こちらにとってもやりがいを感じる事例であり、自分は途中で帰国したいという思いになったことはありません。
-当初、困ることとしては、日本とは時間の感覚が違うこと。いろいろなことを時間どおり又は計画どおりに進めることが難しいことでした。しかし、現在は、ナイル川の滔々とした流れに身を委ねるように、エジプトの時間の流れで仕事を進めています。

EJSでの日本式教育の導入の成果は感じますか。

-Tokkatsuなど日本式教育の導入といっても、エジプト人の教員にとって経験のないことなので、最初はまず形から入らざるを得ませんでしたが、今ではその形が授業においてどんな意味があるのか、またTokkatsuの理念においても理解が進んできています。
-現在保護者へのアンケートなど学校評価を実施しており、そのデータによって成果が見えてくることを期待していますが、既に、家でも掃除をするようになったとか、遠足で出たごみを片づけたり、他の人が捨てたごみも拾ったりしている姿があったとか、学校を離れても自律的な行動が見られるという話しを聞いており、定着している感触はあります。
-カイロ日本人学校と交流を行うEJSもあり、カイロ日本人学校の運動会にEJSの児童生徒が参加したり、日本人とエジプト人の教員同士がお互いに授業を見学しあうなどの交流が進んでいます。

今後のスーパーバイザーの募集について

-エジプトのエルシーシ大統領からは、今後5年でEJSを500校に増やすので、スーパーバイザーも500名必要との発言がありました。
-現在、日本全国から校長経験者や日本人学校の校長経験者が、次のステップとして応募してくれています。今後更に多方面に周知をお願いし、応募者を増やしたいと考えています。
-募集は毎年11月頃開始され、任期は9月から翌年8月末まで。学期は9月に開始し、6月まで。費用は自己負担ですが配偶者の帯同も可能であり、双方合意すれば再契約もあります。
-日本人学校に 60 歳以降に行かれた先生が、退職後の次のステップとして、EJS に応募・問い合わせするケースはよくあります。現在、EJSに勤務するスーパーバイザーで、そういった経歴を持つ先生もいます。第二・第三のキャリアとして、特別活動や自律的な学校運営など日本式教育の優れた点を共有することで、エジプトの教育活動の発展に貢献する意欲ある先生方に、是非応募をご検討いただきたいと思っています。

川越 豊彦(かわごえ とよひこ)先生プロフィール

1985年~2000年: 東京都公立中学校教員
2001年~2015年: 東京都教育庁指導主事、義務教育指導課長ほか
2016年~2020年: 東京都荒川区立尾久八幡中学校統括校長
2019年~2020年: 全日本中学校長会会長
2020年~現在: エジプト日本学校スーパーバイザー

スーパーバイザーの募集については、EDU-Portのウェブサイトに掲載した2026年2月時の募集をご参照ください。
エジプト日本学校における日本人スーパーバイザー募集のお知らせ|海外展開のヒント集|日本型教育の海外展開(EDU-Portニッポン)

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