フィリピン初等中等教育における体力テストデジタル集計アプリの導入及び疾病予防の実現に向けて(令和7年度応援プロジェクト:Pestalozzi Technology株式会社)

フィリピンを対象国に選定した理由及び背景

フィリピンでは成人の肥満率が上昇し、生活習慣病が社会課題となっており、保健省・教育省共に若年層への健康的な生活習慣の促進や身体活動の強化を重視しています。一方で、全国的に標準化された体力測定や健康教育の仕組みは十分に整備されておらず、体力テストは制度化されているものの実施が進んでいない現状があります。こうした背景から、初等中等教育段階における運動・健康教育の重要性は高く、日本式体力テストとデータ活用の仕組みの導入により、児童生徒の行動変容や教育現場の意識向上、将来的な疾病予防に貢献できると考え、フィリピンを対象国として選定しました。

現地教員向けワークショップの実施

2025年7月、University of the Philippines Dilimanにて、フィリピン国内の学校教員及び大学教員計111名を対象に、日本式体力テストに関するワークショップを開催しました。当日は、日本の体力測定の概要説明に加え、体力測定を支援する革新的ツールとして、弊社で開発した体力テストデジタル集計アプリ「ALPHA」の紹介、実際の測定体験、「ALPHA」を活用した結果の振り返り、さらに教育現場における体力測定の将来をテーマとしたパネルディスカッションを実施しました。
ワークショップ後に実施したアンケート(回答数79名)では、96%が「満足している」と回答し、97%が体力テストデジタル集計アプリ「ALPHA」の導入に「興味がある」と回答するなど、高い関心と評価を得る結果となりました。
さらに、追加調査により、フィリピンの公立校では体力テストの実施及び結果提出が制度上求められているものの、機器不足や指導・データ活用を担う人材の不足、教育省(DepEd)によるモニタリング体制の限界などにより、十分に機能していない実態が明らかとなりました。

  • ワークショップ 講義
  • ワークショップ 集合写真①

なお、当日の様子をまとめた動画を作成しており、YouTubeにてご覧いただけます。

現地で苦労したこと

・ワークショップには111名が参加し、限られたスペースで全8種目の体力テストを実施する必要があったため、運営面での調整に苦労しました。事前に会場の広さや現地で利用可能な器具を確認し、日本からの持参物の選定や各種目の配置、参加者の動線を綿密に設計することで、当日は大きな混乱なく実施することができました。
・参加者との円滑なコミュニケーションを図るため、現地在住の日本人にボランティアとして参加いただきました。その結果、言語面・文化面のギャップを補完することができ、ワークショップの理解促進と円滑な進行につながりました。
・個人情報に関する現地の規則や法令について事前確認が十分でなかったため、学校現場で児童生徒を対象とした活動を実施する際に、多くの書類提出や手続きへの対応が求められ、対応に苦慮しました。この経験から、国ごとに異なる法制度を踏まえ、事前の調査や関係機関へのヒヤリングを十分に行う重要性を認識しました。

日本の体力テストの価値の再発見

日本型教育の特長である体力テストは、その実施を通して教育改善や健康指導を行うことに意味があるのだと考えています。しかし改めて見直してみると、その価値は実施そのものだけではなく、テスト項目が体系的に設計されていることや、数値によって児童一人ひとりの体力の状況を客観的に把握し、その結果を次の指導へとつなげられる仕組みにあると感じました。一方で、フィリピンの教育現場においては、体力や健康に関する教育の重要性自体は認識されているものの、それを継続的かつ客観的に評価し、指導改善に生かしていくための仕組みは十分に整っていない現状も確認されました。この比較を通じて、日本の体力テストは単なる測定の機会ではなく、児童の実態を的確に捉え、より適切な教育的支援や健康指導を可能にする、意義ある教育システムとして再評価する契機となりました。

  • ワークショップ シャトルラン
  • ワークショップ 上体起こし

将来の構想

今後は、フィリピンの学校において体力テストデジタル集計アプリ「ALPHA」を活用した日本式体力テスト及び生活習慣アンケートを実施し、児童生徒や教員が運動・健康について学ぶ機会を創出するとともに、体力や生活習慣の実態把握に基づいた将来的な疾病予防施策の検討につなげていきます。
その第一段階として、まずは複数校で日本式体力テストを実施し、日本のデータとの比較を通じてフィリピンにおける課題を明確化します。その上で、現地の教育関係省庁への働きかけを行い、体力テストの導入・活用を政策レベルで推進していくことを目指します。

EDU-Portの応援プロジェクトに認定されたことのメリット

・公的事業としての位置づけにより、社内外におけるプロジェクトの重要性が高まり、継続的な取組の推進力となりました。
・日本政府(文部科学省)関連事業としての位置づけを得ることで、現地の教育機関や関係省庁に対する信頼性が向上し、円滑な関係構築に繋がりました。
・他の採択団体との情報共有や事例把握を通じて、自社単独では得られない知見や示唆を得ることができました。


ワークショップ 集合写真②

本事業で得られた知見を今後の事業推進に確実に生かし、国内外を問わず、弊社のビジョンである「運動データを価値あるものに」の実現に向け、より実効性の高い形で挑戦を継続してまいります。

このページの先頭へ戻る