リコーダー授業立上のためのオンラインによるEJS教員研修(エジプト)_(2020年応援プロジェクト:ヤマハ株式会社)

「スクールプロジェクト」概要

ヤマハ株式会社は、楽器に触れる機会に恵まれない国々の子どもたちが、楽器演奏の機会を獲得できるよう、「公教育における器楽教育の普及」を目指した「スクールプロジェクト」を展開しています。EDU-Portニッポン2016年度公認プロジェクト(~2018年3月)、2018年度応援プロジェクト(~2020年3月)でのベトナムでの活動に続き、2020年度はエジプトでの活動が応援プロジェクトとして採択されました。EDU-Portニッポン関連事業以外の活動を含めると、これまで6か国累計40万人の子どもたちに対し、公教育の中でリコーダー・ピアニカなどの楽器を演奏する機会を提供しております。

 

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<写真1: 現地小学校の様子-ベトナム>

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<写真2: 現地小学校の様子-インド>

エジプトでの活動の経緯

エジプト初等教育における音楽教育事情を調査した際に、「器楽授業が展開されていない点」「学力偏重の詰め込み型教育が一般的であり、社会性・協調性及び規律等(非認知能力)の発達が重視されていない点」に特徴があることが分かりました。また、実際に、現地関係者からも、そうした課題意識の声を頂戴しました。
そうした中で、日本型教育や特別活動を取り入れた「Egypt-Japan School(EJS)※注」の存在に出会いました。本EJSにおいても、器楽教育が行われていなかったことを知り、「EJSに対し、楽器を使った音楽授業開講の支援を行うことが、エジプト社会における上述の課題を解決する糸口となるのではないか」と考え、まずはリコーダーの授業での提案/活動を開始いたしました。現在は、EDU-Portニッポンでの活動に加え、JICA事業に参画する形で現地活動を展開しております。

 

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<図1: エジプト案件 事業スキーム>

今後については、以下のような計画で活動を推進していく予定です。

・2020年: 日本型教育を推進するEJSより、パイロット校10校を選定、教員向けリコーダー研修(オンライン)を開催
・2021年: リコーダー授業をトライアル開講
・2022年: クラスコンサート発表会実施 及び 非認知能力測定法検証結果報告

オンライン研修

新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、現地への渡航が難しくなり、当初予定していた教員研修を全てオンラインで実施する運びとなりました。2020年12月から2021年3月までの期間に、全8回の研修を実施する予定です。一般的に、音楽教育は音質や遅延時間の問題が致命的な問題をもたらすなど、オンライン研修との相性が悪く、高い障壁があります。そこで、通常の研修プログラムを大幅に見直し、困難な点を克服するための工夫を施しながら、毎回の研修を進めています。画面を通してではありますが、リコーダーを初めて手に取るエジプトの先生方の、楽しそうなお顔を拝し、音楽の持つ力を再認識しております。

 

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<写真3: オンラインリコーダー研修を受講するエジプト教員>

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<写真4: オンラインリコーダー研修画面>

エジプトをはじめ、新興国では、楽典、知識偏重の音楽授業が行われているケースも散見されます。一方で、日本の音楽授業は、楽器の実技やクラスメートとの合奏も重視され、教育の目標として人間性が謳われているなどの特色があります。「弊社の活動がそうした人間性教育・非認知能力向上への関心を持つ契機となれば」という思いを持ち、プロジェクトを推進しております。

現状の成果と今後の展望

現状は、パイロット校に選定した10校の教員向けに、オンライン研修を立ち上げた段階です。2021年4月以降の授業開始後は、教員向けの支援に加え、特定非営利活動法人東京学芸大こども未来研究所との協業のもと、児童の非認知能力向上効果の測定手法を確立する計画です。こうした活動の実践を通じ、エジプトの教育関係者の方々に、器楽教育が子どもにもたらすメリットや、教育としての有用性を感じていただきながら、パイロット校以外のEJSや通常の私立・公立校へと、対象範囲の拡大を目指していきたいと考えております。

以 上

 

注釈:「エジプト・日本学校」(EJS)とはJICAの財政支援を受けて開校したエジプト国内の公立初等教育機関です。2018年2月、JICAとエジプト政府の間で円借款貸付契約が調印され、2018年10月にはその第一弾として35校が開校となりました。今後にエジプト政府によりエジプト全土で開校する予定となっています。

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