日本とブラジル間の知的交流の可能性(駐日ブラジル大使館 教育スポーツ部長 レアンドロ・ディアス・ナポリターノ)

2019年12月25日

ブラジルの教育制度:構造と包括性
ブラジルの教育制度は国家教育基本法(National Education Basic Guidelines Law: LDB, (Law nº 9.394/1996))に基づいており、同法にて以下、3層の教育構造が定義されている。

• 初等教育 - 6歳~14歳
• 中等教育 - 15歳~17歳
• 高等教育 - 中等教育修了後

ブラジルでは6歳から14歳までの初等教育が義務教育となっており、公立校においては無償である。連邦憲法205条(Federal Constitution (Art. 205))においては、外国人や障害の有無にかかわらず、すべての人の公教育を受ける権利が保障されている。
障害を持つ人々の教育については特に、連邦憲法208条において特別支援教育の提供が保障されており、それは2006年に国連で採択された障害者権利条約によって裏付けられ、ブラジル改正憲法(Decree No. 6.949/2009)によって広く普及した。
教育の包括性とアクセスに関しては、公立学校及び私立学校においてSpecialized Education Attendance (SEA)という補足的なサービスが提供されることになっている。同サービスでは、教員や学校に対し、特別支援教育研修を通じてインクルーシブな指導技術を提供するほか、SEAの教員と一般の教員間のコミュニケーションの促進を図っている。

全国共通カリキュラムベース(The National Common Curricular Base (BNCC)): 社会情緒的スキルの育成
BNCCは、基礎教育において全ての子どもが発達段階に応じて習得すべき本質的且つ進歩的な一連の学びを定義した規範的な文書である。
BNCCの主な目的は、科学的アプローチを通じて子どもが知的好奇心を発揮し、言語的・非言語的知識を適切に活用し、デジタル通信や情報を思慮深く倫理的に活用できるように、子どもの社会情緒的スキルを育成することで、ブラジルの教育の質の改善につなげることである。
最終的には、子どもたちが高い審美的感覚と健康を維持する力を養い、共感したり対立を解決しようとする気持ちを持ち、個人でも集団においても自主性と責任を持った行動がとれ、より協力的でインクルーシブ且つアクセスしやすい環境において、多様性を尊重できるようになることが期待されている。

国際的取り組み
2018年9月、アルゼンチンにおいて開催されたG20会合において採択された教育大臣宣言にある「教育のファイナンス」16に合わせて、ブラジルでは教育のための効率的かつ効果的な資源の分配における改善の促進に取り組んできた。優先事項の中でも特に、教育機関におけるガバナンス、マネジメント、モニタリングと説明責任の強化とともに、社会的・経済的リターンにより人材開発にポジティブなインパクトをもたらす教育への投資を推進してきた。
これらの取り組みは、2019年6月に発表された「将来に向けてのプログラム(Future-se)」の主軸にも反映されている。ブラジル連邦政府は、本プログラムにおいて大学や教育機関の経営管理、財政と運営の自治の強化を目指している。
プログラムは以下の3本を主軸として展開されている。

1) マネジメント、ガバナンスと起業
2) 調査研究とイノベーション
3) 国際化

ここで、SDGsのターゲット4Bと直接的に関連する「将来に向けてのプログラム」における以下の2つの国際化に向けた取り組みについて強調したい。

1) 外国の評価の高い教育機関で取得した学位や卒業資格をブラジル国内でも有効化するメカニズムの改善
2) 学生や教授の交流の促進

ブラジルではまた、教育の継続性と統合にも十分な配慮がなされている。特に、相乗効果が期待される入学後の最初の数年間に焦点を当てた政策に高い関心が寄せられている。
このような経緯のもと、ブラジルでは2019年4月に教育省と科学技術革新通信省が協同し、科学教育の改善を目指した「学校での科学プログラム」が開始された。同プログラムは、政府による支援を、教育機関や研究員にとどまらず、ブラジル科学オリンピックの開催まで含めることを目指している。現在開催中のオリンピックでは参加学生が100万人に達し、2018年に比べ5倍も増加した。また従来から公立学校を対象に実施されている数学オリンピックも今年が15回目の開催となった。
結論として、「学校での科学プログラム」は、以下のことに寄与することが求められている。

・学校における科学の授業の改善
・問題解決学習の推進
・教員の教授力の向上
・知識の民主化の促進
・科学関連の職業に対する生徒の興味・関心の育成
・若い才能の発見
・創造的な教授法の促進
・新しい方法や技術の活用
・学校・教育機関・大学間の交流の強化
・ブラジル国内で科学の人気が高まること。

日本におけるブラジル人学校と教育協力
日本への移住が強化されてから間もなく30周年を迎える今、日本で暮らすブラジル人は20万人を超え、現在では5番目に大きな外国人コミュニティとなっている。
現在、ブラジル教育省認可の在日ブラジル人学校は愛知県、静岡県、群馬県、茨城県、滋賀県などを中心に36校設置されている。また、日本に住む4000人以上のブラジル人の児童・生徒を支援する約500人の教員が存在する。
一方で、日本におけるブラジル人教育の質を改善するためにできることは、数多くあり、以下はその一例である。

- 在日ブラジル人向けの日本語学習に対するサポート
- 同じ地域にある日本の学校とブラジル人学校の教育交流の促進(例:ブラジルと日本の運動会)
- 社会文化交流イベントを通じた在日ブラジル人の日本人社会への溶け込みの促進(例:武道/カポエイラのワークショップ、ブラジルと日本の音楽など)

教育協力については、ブラジルと日本が二国間の関係をさらに良いものにするために、協同できる機会が大きく開かれていると考える。
ブラジルにある学校については、以下のようなブラジルと日本の二国間教育協力を育むことが期待される。
- ブラジルにおいて、日本式の教授法に関する教員研修を増やすことで、日本の知徳体、日直や武道の精神に基づいた教育モデルを推進する。(例:2018年の日本へのSIEEESP[サンパウロ州教育組合]ミッション )
- ブラジルと日本で高校生交換留学の支援を強化する。(例:科学技術振興機構による「さくらサイエンスプラン」、文部科学省による「トビタテ!留学JAPAN」)
- ブラジルと日本の教育機関における姉妹校モデルに基づいた教育協力プログラムを促進する。

最後に、100年以上に渡って培われてきた絆によって強化されたブラジルと日本の友好的な外交関係により、さらなる教育協力に取り組み、両国と両国の社会にポジティブなインパクトがもたらされることを祈念している。

※この文書はあくまで個人の見解に基づくものであり、所属する組織・機関などの公式見解ではありません。
_______________________________________________________________________
■著者プロフィール
Profile Picture (3).jpegレアンドロ・ディアス・ナポリターノ (Leandro Diaz Napolitano)
駐日ブラジル大使館 教育スポーツ協力部長
2002年より外交省外交官として勤務。2016年より駐日ブラジル大使館教育スポーツ協力部に配属。


© 文部科学省 日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)